M-LOKとは?
MAGPULが開発した現代ライフルに必須のアタッチメントシステム
現代ライフルのアクセサリーパーツ取り付けでは、今や定番とも言えるレールアタッチメントシステムとなったM-LOK。M-LOKとはModular Lockを略して命名したもので、銃器メーカーMAGPUL社が開発した。
2014年に発表とまだまだ歴史の浅いレールシステムにも関わらずその普及は早く、先に誕生したKeyModよりも既に多くの実績を残していると言える。毎年次々と新しいモデルが発表されるハンドガードなどのレールプラットフォームにおいて、20mmピカティニーレールとM-LOKの組み合わせはもはや必須といっても過言ではないだろう。
そんなM-LOKは一体どのようなアタッチメントシステムなのだろうか。そして、誕生したきっかけや大成功を収めた理由はなんだったのだろうか?
M-LOKの特徴
M-LOK最大の利点はかさばる20mmレールを最小限の配置で済ませられることにある。M-LOK専用のアタッチメントを備えるアクセサリーパーツであれば直接ハンドガードに取り付けることが可能。また20mmピカティニーレール用のアクセサリーであっても、必要最小限の追加レールを取り付けることで重量増加を抑えることができる。
M-LOKへのアタッチメントの取り付けは簡単で、ハンドガードの表からスロットにナットを挿し込み内部で90°回るようにすれば、スロットにナットが噛み合い誰でもきれいに固定が可能だ。
M-LOKのスロットは規格が統一されており、その大きさは長さ32mm、幅7mm、角は丸みを帯び半径は2.38mmとなっている。スロット形状はKeyModのように前後の制約がないため、アクセサリーの向きも状況に合わせて180°変更することができる。アタッチメントはスロットに対して上下前後4方向からサポートされるため、リコイルや外的な衝撃からアクセサリーがズレることを防ぎ、アクセサリーの付け外しの際にも毎回同じ位置でも取り付けを再現できる。
また、スロットの配置は20mmを基準としていて、1つのスロットを使用することも2つのスロットをまたがって使用することもできるため、スロットの長さよりも小さな間隔でアタッチメントの取り付けが可能となっている。
M-LOKは現在、無料ライセンスとなっているが、オープンソースではないためM-LOKを製品に利用したいメーカーはMAGPULのライセンスを取得する必要がある。M-LOKのマーキングが各社のパーツに刻印されているのはそのためだ。MAGPULは、これにより全てのM-LOK製品に互換性を持たせられるように制御できると言い、現在では多くのメーカーによって利用されている。
M-LOKのベースはMOEスロット
M-LOKのベースとなるアタッチメントシステムは最初、MAGPULが2007年に発表したMASADA(のちのACR)のコンセプトモデルに搭載されていたMOE(Magpul Original Equipment)スロットシステムである。MOEスロットは2009にはM16/M4およびAR-15向けのポリマー製ハンドガード、MOEハンドガードの機能として正式にリリースされ、追加レールやライトマウント、フォアグリップ、バイポッドスタッドなどの専用アクセサリーも開発された。
これはそれまで20mmピカティニーレールが一般的であった当時、レールそのものが不要で軽量化や薄さ、ハンドガード表面のスムースさを追求しつつ、バレルの放熱穴も兼ねる働きをする画期的な発明であった。
しかし、MOEスロットの弱点はアクセサリーの取り付け方法にあった。ボルトとナットを使用してアクセサリーを固定するMOEスロットではスロットの内側にアクセスする必要があり、ハンドガードなどに追加でアクセサリーを追加する場合などに大きな不便があった。またMOEスロット同士の間隔も広く、適切な位置にアクセサリーを取り付けるということへの制限がある程度発生していた。
MOEスロットシステムの欠点を理解していたMAGPULは、数年にわたる長い期間を費やして改善に取り組み上記の問題点を全て解決するモジュラーレールシステムを開発。2014年にMOEに代わる新しい規格としてM-LOKを発表した。
M-LOKではTスロットナットという建築や内装などの構造体で用いられる手法を取り入れ、ナットをハンドガードの表から簡易にロックできることを可能としたほか、スロットの配置も改善され取り付けられるアクセサリーやレールアタッチメントの位置を自由に調整できるようになった。また構造が単純で強度があるため、金属のみならずポリマーパーツでも取り付けが可能。アタッチメント部分の製造も簡単なため開発もしやすいとまさにいいことずくめな企画と進化した。
M-LOKが主導権を握るきっかけとなったクレーンのテスト
M-LOKがより普及することを助長したのがアメリア海軍海上戦闘センター(クレーン:CRANE)によるモジュラーレールシステムの評価試験だろう。2017年当時、民間ではかなり普及していた新しいレールシステムはアメリカ軍でも取り入れることが可能な技術であるか注目されており、クレーンはUSSOCOM向けにKeyModとM-LOKの2つのレールシステムの精度や耐久性に対するテストを行った。
同じ箇所に何度も付け外しを行う取り付け精度のテストは、KeyModよりも再現性が高くその誤差は1/4以下。落下試験による耐久度テストではスロット部分の損傷も少なく、引っ張り強度を見る負荷テストにおいてもKeyModに比べおよそ3倍程度の力に耐えるなど優秀な成績を残した。クレーンはUSSOCOMに対しM-LOKの有用性を認め、その後のUSSOCOMでの火器類へのレールシステムの導入に大きな影響を与えている。
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